第37回~水の中でのウォーキング②

第37回~水の中でのウォーキング②

 

今回は「水の中でのウォーキング②」です。

 

前回水の特性として「浮力」、「水圧」、「抵抗」をご説明しましたが、もう一つ水中で運動をする際に知っておくべき知識として「水の温度(水温)」があげられます。

 

例えば水泳の授業では、児童では水温が22度以上、水温と気温の和が50度以上といった目安が示されています。

 

では運動に最適な水温は何度なのでしょうか。

 

松本らは健康な成人の競泳競技では25〜28度の水温、中高年齢者の運動機能改善を目的とした水中運動では30度程度の水温、心機能や免疫能が改善する目的の場合は33度程度の水温が有効であると報告しています。

 

また36〜37度程度の水温は一般的に不感温度といわれ、熱の影響が少なく心拍数、血圧、呼吸、酸素消費量などほとんど変化がないと言われています。

 

このように水温は目的によっても異なり、それらを踏まえてうまく調整しなければいけません。

 

一般のプールなどで水温を容易に調整できない場合は保温用水着を使用するのも方法の一つです。

 

次回は「水の中でのウォーキング③」についてお話しします。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第36回~水の中でのウォーキング①

第36回~水の中でのウォーキング①

 

今回は「水の中でのウォーキング①」です。

 

まず水の特性の一つとして水の中に入ることで「浮力」が働きます。

 

浮力は腰のあたりまで水につかると重力負荷は体重の約50%〜60%、胸のあたりまでつかると約30%というように水深が増すにつれて、重力負荷が減少します。

 

そのため浮力が働くことによって地上でのウォーキングと異なり股関節、膝関節、足関節への負荷が軽減されます。

 

また肥満の方や地上で歩行すると関節に痛みが出る方などもより少ない負担でウォーキングを行うことが可能となります。

 

二つ目の特性として「水圧」があります。

 

水圧がかかることによって呼吸機能、心肺機能の向上や静脈還流を促進することが期待できます。

 

三つ目に「抵抗」があります。

 

水は粘性があるため安全であり、動かす速度や面積によって手軽に負荷を調整することができます。

 

もちろん筋力の増大効果も期待することができます。

 

水中での運動はこれらの特性を理解して行う必要があります。

 

次回は「水の中でのウォーキング②」についてお話しします。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第35回~ノルディックウォーキングをリハビリテーションに活用

第35回~ノルディックウォーキングをリハビリテーションに活用

 

今回は「ノルディックウォーキングをリハビリテーションに活用」です。

 

本来ノルディックウォーキングは歩行運動の一つとして用いられてきましたが最近ではリハビリテーションの場面でも用いられるようになってきました。

 

例えばパーキンソン病患者の場合、小刻みに脚を振り出して歩く「小刻み歩行」という特徴的な歩き方がみられるようになります。

 

また体の筋肉の緊張が高まりやすく体の動きの硬さがみられるようになります。

 

こういった方にノルディックウォーキングを行うことで脚を大きく振りだすことがイメージしやすく、また2本のポールを前方へ出そうとすると自ずと体のひねりがみられるようになります。

 

そしてより理想的な歩行を意識しやすいことから私自身も実際のリハビリテーションで使用することがあります。

 

また一般的な杖に比べるとスタイリッシュなため患者さんの受け入れがいいことも特徴の一つです。

 

このように様々な場面で用いられることが増えており今後も多くの効果的な使用方法が確立されることを望みます。

 

次回は「水の中でのウォーキング」についてお話しします。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第34回~ノルディックウォーキングの基本的な歩き方

第34回~ノルディックウォーキングの基本的な歩き方

 

前回はノルディックウォーキングの基本的な歩き方であるディフェンシブスタイルをご紹介しました。

 

今回はこの歩き方に慣れてきた人やさらに運動負荷を高めたい人におすすめのアグレッシブスタイルの歩き方をご紹介します。

 

ディフェンシブスタイルでは4点支持を基本とした歩行でしたがアグレッシブスタイルの場合はよりアクティブとなり歩行時に自然に腕を振る中で肘はやや曲げ気味でポールを斜めに突いていきます。

 

その際にからだをぐっと前に突き出す感じで歩くようにします(写真参照)。

 

徐々にこの歩き方に慣れてきたら肘を伸ばし、ポールを斜めについて体をさらに前傾させてより前方へ進むことを意識して歩いてみましょう。

 

こうすることでより前方への推進力を得ることができ上級者向けの歩き方となります。

 

アグレッシブスタイルはディフェンシブスタイルに比べ特に腕と体幹の力を動員し、より運動強度を高めることができます。

 

あとはリズミカルに歩けるように練習をしてみてください。

 

次回は「ノルディックウォーキングをリハビリテーションに活用」です。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第33回~ノルディックウォーキングの基本的な歩き方

第33回~ノルディックウォーキングの基本的な歩き方

 

今回はノルディックウォーキングの基本的な歩き方をご説明します。

 

初心者の方におすすめのディフェンシブスタイルでの歩行です。

 

まずポールを適切な長さに調整し、ポールのグリップをしっかりと握ります。

 

基本的には通常の歩行と同様ですが片側のポールを垂直に突くとともに、残りのポールは後ろ足の横に沿え、4点支持を基本とした歩行です(写真参照)。

 

この歩行は一本杖歩行に比べ左右両側の運動となり、効果的な運動となります。

 

また慣れてきたら肘をやや伸ばして腕をしっかりと前に突き出し、歩幅を広げていきます。

 

この歩行はノルディックウォーキングで最も安全かつ安定感のある歩行のためノルディックウォーキングの導入段階として位置付けられており、歩きに不安がある方もまずこちらの歩き方から実践してみましょう。

 

次回はこの歩き方に慣れてきた方やより運動負荷を高めたい人にオススメのアグレッシブスタイルの歩き方をご紹介します。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第32回~ノルディックウォーキング

第32回~ノルディックウォーキング

 

ノルディックウォーキングをご存知でしょうか?

 

元々はクロスカントリースキーの選手達が、夏の間の体力維持・強化トレーニングとして行なっていた「スキーウォーク」を、ポールを使った簡単な歩行運動として紹介されたのが「ノルディックウォーク」です(日本ノルディックウォーキング協会ホームページ参照)。

 

ノルディックウォーキングポールという2本の専用のポールを使って地面を押し出すようにして歩きます。

 

このポールを使った歩行は一般の歩行に比べてより全身の筋肉を使い、さらに膝や背骨への負担が少ないことが最大の利点です。

 

そのため日頃の散歩の際に使用したり、リハビリテーションとしても活用することができます。

 

またその効果としてノルディックウォーキングを継続して行うことで足腰の筋力向上や歩行時間の短縮、バランス能力の向上といった運動機能改善の効果も報告されており、有用な歩行ツールの一つです。

 

次回はノルディックウォーキングの基本的な歩き方をご紹介します。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第24回~骨粗鬆症と転倒の関係③

第24回~骨粗鬆症と転倒の関係③

 

今回は「骨粗鬆症と転倒の関係③」です。

 

前回骨粗鬆症では脆弱性骨折(骨粗鬆症が原因で発症する骨折)を防ぐこと、骨折の連鎖(脆弱性骨折後に再度骨折してしまうこと)を防ぐことが重要となることをお話ししました。

 

日本での地域在宅高齢者の年間転倒発生率は10〜25%程度で、一般住民の方では一般道路や歩道が転倒の発生場所の半数を占め、日中の外出機会が多い時間帯に転倒の頻度が高いという報告があります。

 

骨粗鬆症の予防と治療のガイドラインの中で中高年者の予防に関して「自己管理による歩行運動も有効である」、「一般中高年者には、歩行を中心とした運動の日常的実施を推奨する」(グレードB)と記載されており、骨粗鬆症の予防のためには歩行が重要であることが記載されています。

 

具体的な歩行の注意点として普段よりやや歩幅を広くして、やや速足で歩くことが薦められています。

 

通常速度での歩行では運動効果が少なく、1日30〜60分、1回で歩いても良いし、2〜3回に分けても良いと言われています。

 

また週2〜7回行うことが薦められています。

 

次回も予防方法をご紹介します。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第23回~歩行と骨粗鬆症の関係②

第23回~歩行と骨粗鬆症の関係②

 

今回は「歩行と骨粗鬆症の関係②」です。

 

骨粗鬆症が原因で発症する骨折を脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折といい、軽微な外力(一般的に立った高さからの転倒)で発生した骨折のことを指します。

 

骨粗鬆症では骨強度の低下に伴って骨折発生のリスクが増大すると言われています。

 

発生数が多い骨折の種類として椎体骨折(背骨の骨折)、大腿骨近位部骨折(大腿骨の付け根の骨折)、橈骨遠位端骨折(手首の骨折)、上腕骨近位部骨折(上腕骨の付け根の骨折)があり、これらは高齢者の四大骨折とも呼ばれます。

 

脆弱性骨折を受傷してしまうと再度骨折してしまうリスクが高くなってしまいます。

 

これを「骨折の連鎖」と言います。

 

さらに驚くべきことに例えば椎体骨折を一度受傷すると前腕、椎体、大腿骨近位部を骨折するリスクがそれぞれ1.4倍、4.4倍、2.3倍に高くなるとの報告もあります(Klotzbuecher CMら、2000)。

 

そのため骨粗鬆症では脆弱性骨折を防ぐこと、骨折の連鎖を防ぐことが非常に重要となります。

 

次回具体的な予防方法についてお話しします。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第22回~歩行と骨粗鬆症の関係①

第22回~歩行と骨粗鬆症の関係①

 

今回は「歩行と骨粗鬆症の関係①」です。

 

皆さん骨粗鬆症という言葉を一度は聞かれたことがあるかと思います。

 

骨粗鬆症というのは骨がもろくなり、骨折しやすい状態にある全身的な骨の問題です。

 

原因は2つあり、1つ目に20歳代までに獲得する最大骨量(これが生涯で最大となる骨量)が少ないことです。

 

2つ目に骨は生涯にわたって絶えず古い骨を吸収して新しい骨を作る新陳代謝を繰り返しており、このバランスが崩れ、骨を壊す方が勝ることによって骨量が減少することがあげられます。

 

このバランスが崩れる原因は主に閉経、加齢、運動不足があります。

 

骨粗鬆症の日本の患者数は1,280万人(男性約300万人、女性約980万人)と推計されています。

 

言い換えると約10人に1人の割合で骨粗鬆症の方がおられるということです。

 

「骨粗鬆症は骨の老化の問題だから仕方がない」と思われていないでしょうか?

 

多くは骨粗鬆症治療も転倒などで骨折を起こしてからやっと始めるという方が多いのが現状です。

 

ぜひ予防の観点から考えてみてください。

 

次回は「歩行と骨粗鬆症②」です。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第20回~フレイルと筋肉について

第20回~フレイルと筋肉について

 

これまでフレイルと歩行についてお話ししてきました。

 

歩行以外にもフレイル判定の運動機能として筋力を指標とすることもあります。

 

今回は筋力測定の中でも簡便でスポーツテストなどで多くの方は経験したことのある握力についてお話しします。

 

まず測定方法の一例として①両足を肩幅に開いて立ち、②グリップの握る位置を握りやすいように調整する、③測定時は立位とし、全力で握る、④利き手で2回測定します。

 

その際の注意点として腕は上体から離れすぎず、また腕が上体についたり振り回したり、膝を曲げたりしない、②2回の測定値の高い方を記録とします。

 

握力とフレイルの関係として「フレイル判定・診断の提案」(J-CHS)では男性が26kg未満、女性が18kg未満を基準としています。

 

握力は脚や体幹などのより大きな部位の筋力と関係が深く、個人間の全身の筋力の優劣を相対的に反映しているとも言われています。

 

スポーツ施設などで定期的に測定してみてはいかがでしょうか。

 

次回はフレイルと栄養についてお話しします。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平