フォークボールが落ちる原理と簡単アドバイス

フォークボールが落ちる原理と簡単アドバイス

 

今日はフォークボールが落ちる原理と投げるための簡単なアドバイスについてお話しいたします。

 

以前「ボールがホップする?マグヌス効果について」でお話したようにボールにバックスピンがかかると圧力差によって揚力が生じ、ボールに浮き上がる力が加わります。

 

一方、フォークボールはボールを挟んで投げることにより、ボールの回転数が著しく減少します。

 

ストレートが1秒間に30回転ほどするのに対してフォークボールは10回程度しか回転していないそうです。

 

回転数が少ないことによってボールに揚力が生じにくく、ボールが重力に抵抗することができずに自然に落下していきます。

 

質の高いフォークボールを投げるためにはいかに球速を下げずに回転数を抑えた投球をできるかがポイントになります。

 

フォークボールが落ちる原理と簡単アドバイス

 

リリース直前に手首や指が動いてしまうとボールに回転がかかってしまうので、手首・指を固めて投げる必要があります。

 

手指の力をボールに伝えられない分、より股関節・体幹・腕の連動性が求められます。

 

肘下がりのリリースでは肘から先の部位しか使うことができず、球速を保つことができません。

 

手指を固めた状態で球速を落とさずリリースするためには、体全体がしなり(横から見てCカーブを形成した位置)から肘より先が伸びてくるリリースが必要となります。

 

この体の使い方はフォークボールに限らず、ハイパフォーマンスを発揮するために必須の動作となりますので、ぜひチェックしてみてください。

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

回転軸を平行にするためのポイント(腕の角度について)

回転軸を平行にするためのポイント(腕の角度について)

 

前回に引き続いてボールの回転軸を地面と平行にするためにどうすればいいのかお話ししますが、今回は腕の角度に注目したいと思います。

 

以前「オーバースローではなぜ体幹を傾けるのか?」の回でお話ししたように体幹を左側に傾ける(右投手)ことで腕の位置を調整してリリースしています。

 

そのため、リリースするときの指・手首の角度は体の傾き加減によって決まります。

 

回転軸を平行にするためのポイント(腕の角度について)

 

上の写真では、体の傾きが大きく、その結果、手首・指が真っすぐになっているのが分かるかと思います。

 

この角度からたたきつけるようにスピンをかけることできれいなバックスピンをかけやすくなります。

 

体の傾きが大きい投手ほどストレートが速いという研究データも出ていますので、球質以外の投球パフォーマンスにおいてもこの傾きが重要だといえます。

 

ただ、体の傾きを大きくするためには体幹の柔軟性や支えとなるステップ脚の筋力が必要になってきます。

 

これらの身体能力が備わっていないと投球時のバランスが崩れやすくなりますので注意が必要です。

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

回転軸を平行にするためのポイント

回転軸を平行にするためのポイント

 

今回は回転軸が平行なストレートを投げるためのポイントについてお話しします。

 

回転軸を平行にするためのポイント

 

上の写真はリリースの瞬間ですが、右肩・左肩・左肘(肩-肩-肘ライン)を結んだのが青線です。

 

この肩-肩-肘ラインが一直線になるのが理想的な形といわれています。

 

しかし、肘から先を見てみると青線より少し高い位置にあります。

 

肘が完全に伸びきっていれば、肘からボールまでも青線に一致するはずですが、肘が少し曲がっているために直線よりも上方に移動しています。

 

肘が曲がっていることで手の向きが地面に対して垂直方向に傾き、ボールの回転軸が地面と平行に近づけることができます。

 

逆に、肘が伸びきった状態でリリースすると回転軸が傾いてしまい、きれいなバックスピンが効いたストレートを投げにくくなってしまいます。

 

リリースの瞬間は両肩と投げる側の肘までが一直線上にあり、肘から先は肩-肩-肘ラインよりも上方にあるのがポイントといえるでしょう。

 

リリースの瞬間を正面から撮影すると簡単に確認することができますので、是非チェックしてみてください。

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

ストレートのボール回転軸

ストレートのボール回転軸

 

前回、投げるボールにバックスピンを強くかけるとマグヌス効果による揚力が働きノビのあるストレートを投げることができるというお話をしました。

 

バックスピンの回転数が多いほど、より揚力が働き、バッターからは非常に打ちにくいボールになります。

 

ただ、回転数だけでなく、ボールの回転軸も質の高いストレートや変化球を投げるためには重要なファクターとなります。

 

今回はストレートのボール回転軸についてお話しいたします。

 

ストレートのボール回転軸

 

上の写真は投手が投げたボールをバッター側からみたものです。

 

赤線がボールの回転軸だとするときれいなバックスピンもしくはトップスピンがかかっていることになります。

 

進行方向に対して垂直な回転軸だと傾きのない純粋なスピンとなります。

 

プロ野球投手であっても純粋なスピンをかけている選手はいないといわれていて少なからずボールの回転に傾きが生じています。

 

それでもハイレベルな投手では回転軸の向きが進行方向に対して垂直かつ地面に対して水平に近い(純粋なバックスピンに近い) 回転1)で動いているといわれています。

 

パフォーマンス向上のためには回転数だけでなく、回転軸にも着目する必要がありそうですね。

 

平均的なピッチャーでは、ストレートの回転軸は大体30度傾いてしまっているのですが、奪三振率の高い阪神藤川投手のストレートは5度しか傾いていないというデータもあるようです。

 

「糸を引くようなストレート」と形容されるボールはこの回転軸の傾きが少ないといえます。

 

次回からは回転軸の傾きが少ないきれいなスピンがかかったストレートを投げるためにどうすればいいか投球動作の視点で考えてみたいと思います。

 

1) Jinji T, et al: Factors determining the spin axis of a pitched fastball in baseball. Journal of Sports Sciences.2011

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

ポップするボールの正体!マグヌス効果について

ポップするボールの正体!マグヌス効果についてス効果について

 

みなさん「マグヌス効果」という言葉をご存知でしょうか?

 

球種によって大きく差はありますが、ボールは回転をしています。

 

そのボールの回転に対してマグヌス効果が働き、ボールが落ちやすくなったり、反対に落ちにくくなったり(いわゆるノビのあるストレート)と様々な変化が起こります。

 

今日はこのマグヌス効果について説明させて頂きます。

 

ポップするボールの正体!マグヌス効果についてス効果について

 

上の図は投げたボールがバッター方向に向かって進んでいるものです。

 

右が投手側で左がバッター側です。

 

赤色がボールの回転方向を示していてこの図ではストレートで生じるバックスピンがかかっています。

 

バックスピンの方向に空気(青矢印)が引きずられるため、 引きずられた空気が流れていく側のスピードが大きくなります。

 

今回の図ではボールの上側の空気の速度が下側より速くなります。

 

そしてこのスピードが速いほどボールに対する圧力が小さくなり(ベルヌーイの定理といいます)、その圧力の差によってボールに垂直で上向きの力(揚力)が働くようになります。

 

ただ、ボールには重力など他にも様々な力がかかっているため、現実的にはボールがホップすることはなく、ノビのあるストレートになります。

 

藤川投手のストレートはテレビで見るとホップしているように見えてバッターが空振りすることがとても多いですが、きれいなバックスピンがかかってボールに生じている揚力が大きいことが一因だと思います。

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

回転数を高めるために重要なのは指

回転数を高めるための重要なポイント

 

近年、投手のパフォーマンスをはかる指標として球速だけでなく、回転数を使うことが多くなりました。

 

一般的に球速が速い投手ほど回転数が高く、メジャーリーグのトップクラスでは1分間に2300~2500回転もしているといわれています。

 

しかし、中には球速が速くなくても回転数が高いストレートを投げる投手もいます。

 

代表的なのが、メジャーで活躍した上原投手で球速は140km/hほどですが回転数は2600回転もあります。

 

回転数を高めるための重要なポイント

 

キレやノビのあるストレートと表現されるストレートを投げる投手はこの回転数が高く、球速以上にバッターは速く感じるようです。

 

回転数を高めるためにはいくつかポイントがありますが、特に重要なのが指の動きです。

 

今日はその点についてお話しします。

 

リリース直前の指の動きを見てみると人差し指と中指でボールを強く押しこんでいます1)。

 

よく「スナップをきかせて投げる」といわれますが、それでは手首だけの動きが強調されてしまい、回転数を高めるには不十分です。

 

また、リリース直前でただボールを押し込むだけでなく、人差し指と中指の第1関節と第2関節は反り返る方向に動いています2)。

 

この指のしなりがあることでより強くボールを押し込むことができるといえます。

 

成書では、第一・第二関節は真っ直ぐまでしか伸びないと記されていますが、関節のゆるみがあるために反る動きが多少出ます。この反る動きがとても重要です。

 

自宅でも簡単に行えるエクササイズとしては、人差し指と中指の第1・第2関節を反った状態で机を押すトレーニングがオススメです。

 

1) Kinoshita.H et al:Finger forces in fastball baseball pitching.Hum Mov Sci,2017
2) Jon Hore et al:Skilled throwers use physics to time ball release to the nearest millisecond.J Neurophysiol,2011

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

 

新たなパフォーマンス数値「回転数」とは?

新たなパフォーマンス数値「回転数」とは?

 

最近では、投手のパフォーマンスを回転数で表すことが多くなっています。

 

メジャーリーグではトラックシステムという機器を使ってボールの回転数を計測してその数値を公表しています。

 

ストレートでは回転数が多いことにより、リリースした直後の速度(初速)と終速の差が小さくなり、バッターからは球速以上に速く感じ、打ちづらいボールになるようです。

 

球速と回転数は相関関係に近い(球速が高い投手ほど回転数が多い)ようですが、中には球速が低くても回転数が多い投手もいます。

 

その代表的な選手が上原投手です。

 

球速としては140km/hほどですが、回転数は2600回転/分といわれており、メジャー(メジャー平均2200回転/分)でもトップクラスです。

 

ダルビッシュ投手の回転数は2485回転/分でMLB投手199名中の8位であったといわれていて、このデータを参考にしても上原投手の回転数の多さが際立ちます。

 

140km/hのストレートでメジャーの選手から空振りをとれる一つの要因だといえるでしょう。

 

新たなパフォーマンス数値「回転数」とは?

 

ここでみなさんが気になるのは回転数が高いボールを投げるためにはどうすればよいのかという点だと思います。

 

残念ながら今までの投球バイオメカニクスの研究では球速に着目したものが多く、回転数に関する報告はまだ少ないといえます。

 

その中でも一つ興味深い見解を挙げるとすれば、「指の動きが回転数に影響を与えている」という点です。

 

次回はその点にについてお話しいたします。

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

日本とアメリカの学童スポーツの違い

日本とアメリカの学童スポーツの違い

 

日本では小学生でスポーツクラブに所属すると、その競技しか行わない傾向があるかと思います。

 

スポーツ競技が盛んなアメリカでは夏場は野球、冬場になると野球は行わずにアイスホッケーをやるといったように、小さいときは色々なスポーツを経験させて学年が上がってから専門的にスポーツを行う場合が多いようです。

 

日本のように一つのスポーツばかりを行っていると、スポーツ特有の動作を繰り返し行うことになり、体一部分への負担が大きくなり、ケガを起こしやすくなります。

 

また、最近の学童野球では大会数が増えていて体を休める暇もなく、冬場も関係なく年中試合をしている印象があります。いくら理想的な投球動作を習得したとしても投げる頻度が多ければ、オーバーユースの故障につながってしまいます。

 

使いすぎによる故障を防ぐためには投球制限などのルール改正やオフシーズンを設けるなど環境整備が必要不可欠だと思います。

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

遠投練習が肘に加えるダメージ

遠投練習が肘に加えるダメージ

 

遠投は「肩つくり」の意味合いで昔からよく行われている練習だと思います。

 

しかし、近年では遠投することでケガをしてしまうという意見もあり、遠投練習の是非については賛否分かれるところかと思います。

 

今回は遠投練習による肘への負担がどのくらい大きいのかお話しします。

 

大学野球選手に

 

①:マウンドからの全力投球

②:55m先へ低い軌道の全力投球

➂:遠投

 

の3通りで全力投球を行ってもらい、肘にかかる負担を比較した研究があります1)。

 

投球バイオメカニクスでは肘に加わる負担は内反トルク(Nm)という数値を使うことが多く、この数値が大きいほど肘への負担が大きいと判断されます。

 

その研究結果によると

 

①:92Nm

②:95Nm

➂:100Nmでした。

 

②は①よりかなり距離が伸びている(18.44m→55m)のにも関わらず、そこまで数値は上がっていません。

 

それに比べて遠投になると肘にかかる負担がとても大きくなることがわかるかと思います。

 

このような結果になった要因としては、遠投では上向きに投げようとするため、下半身や体幹を効率よく使うことができず、上肢に頼った投げ方となり、肘にかかる負担が大きくなると考えられます。

 

遠投練習をやるのであれば、ただ遠くに投げるのではなく、低い軌道で投げられる距離に留め、股関節・骨盤などを使った正しい投球動作で行うことが重要だと思います。

 

参考文献
1)Fleisig GS et al:Biomechanical comparison of baseball pitching and long-toss: implications for training and rehabilitation. J Orthop Sports Phys Ther. 2011

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

オーバースローで体を傾けることによる2つのメリット

オーバースローで体を傾けることによる2つのメリット

 

以前このコラムでオーバースローでは体幹を横に傾けることで腕を高い位置に保って投球しているということをお話ししました。

 

本日は体幹を傾けることでどのようなメリットがあるかについてお話しします。

 

オーバースローで体を傾けることによる2つのメリット

 

まず、パフォーマンスの観点からですが、スピードボールを投げる条件として重心移動をスムーズに行い、下半身の力を上半身に伝達することが挙げられます

 

そのためには左足を上げたときに右に乗っている体重(右投手)をリリースのときにはステップした左足にしっかりと乗せることが必要になります。

 

リリース直前のフェーズで体幹を傾ける(1塁側)ことができると、重心が体の左側に移動するため、ステップした左足への荷重が加わりやすくなり、その結果、下半身の力を効率よく腕の振りに伝えることが可能になります。

 

また、体幹を傾けることによって肩関節だけに頼らず、体全体を使って無理なく腕の位置を高く保つことができます

 

もし、体幹がまっすぐのままオーバースローの位置まで腕を上げようとすれば、肩関節を無理に動かさなければならず、インピンジメント症候群やSLAP損傷などの野球肩障害の発生につながる危険性があります。

 

体幹の傾きが球速増加につながる1)ことや故障リスクの軽減2)につながることは投球バイオメカニクスの研究で実証されています。

 

体幹を傾けて投げる」という観点を持たれている方はあまり多くないと思いますが、着目すべき重要なポイントだといえるでしょう。

 

参考文献
1) Oyama,S et al:Effect of excessive contralateral trunk tilt on pitching biomechanics and performance in high school baseball pitchers.Am J Sports Med.2013
2) Tocci,N.X et al:The Effect of Stride Length and Lateral Pelvic Tilt on Elbow Torque in Youth Baseball Pitchers. J Appl Biomech.2017

 

スタッフ(理学療法士):芹田