ポップするボールの正体!マグヌス効果について

ポップするボールの正体!マグヌス効果についてス効果について

 

みなさん「マグヌス効果」という言葉をご存知でしょうか?

 

球種によって大きく差はありますが、ボールは回転をしています。

 

そのボールの回転に対してマグヌス効果が働き、ボールが落ちやすくなったり、反対に落ちにくくなったり(いわゆるノビのあるストレート)と様々な変化が起こります。

 

今日はこのマグヌス効果について説明させて頂きます。

 

ポップするボールの正体!マグヌス効果についてス効果について

 

上の図は投げたボールがバッター方向に向かって進んでいるものです。

 

右が投手側で左がバッター側です。

 

赤色がボールの回転方向を示していてこの図ではストレートで生じるバックスピンがかかっています。

 

バックスピンの方向に空気(青矢印)が引きずられるため、 引きずられた空気が流れていく側のスピードが大きくなります。

 

今回の図ではボールの上側の空気の速度が下側より速くなります。

 

そしてこのスピードが速いほどボールに対する圧力が小さくなり(ベルヌーイの定理といいます)、その圧力の差によってボールに垂直で上向きの力(揚力)が働くようになります。

 

ただ、ボールには重力など他にも様々な力がかかっているため、現実的にはボールがホップすることはなく、ノビのあるストレートになります。

 

藤川投手のストレートはテレビで見るとホップしているように見えてバッターが空振りすることがとても多いですが、きれいなバックスピンがかかってボールに生じている揚力が大きいことが一因だと思います。

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

回転数を高めるために重要なのは指

回転数を高めるための重要なポイント

 

近年、投手のパフォーマンスをはかる指標として球速だけでなく、回転数を使うことが多くなりました。

 

一般的に球速が速い投手ほど回転数が高く、メジャーリーグのトップクラスでは1分間に2300~2500回転もしているといわれています。

 

しかし、中には球速が速くなくても回転数が高いストレートを投げる投手もいます。

 

代表的なのが、メジャーで活躍した上原投手で球速は140km/hほどですが回転数は2600回転もあります。

 

回転数を高めるための重要なポイント

 

キレやノビのあるストレートと表現されるストレートを投げる投手はこの回転数が高く、球速以上にバッターは速く感じるようです。

 

回転数を高めるためにはいくつかポイントがありますが、特に重要なのが指の動きです。

 

今日はその点についてお話しします。

 

リリース直前の指の動きを見てみると人差し指と中指でボールを強く押しこんでいます1)。

 

よく「スナップをきかせて投げる」といわれますが、それでは手首だけの動きが強調されてしまい、回転数を高めるには不十分です。

 

また、リリース直前でただボールを押し込むだけでなく、人差し指と中指の第1関節と第2関節は反り返る方向に動いています2)。

 

この指のしなりがあることでより強くボールを押し込むことができるといえます。

 

成書では、第一・第二関節は真っ直ぐまでしか伸びないと記されていますが、関節のゆるみがあるために反る動きが多少出ます。この反る動きがとても重要です。

 

自宅でも簡単に行えるエクササイズとしては、人差し指と中指の第1・第2関節を反った状態で机を押すトレーニングがオススメです。

 

1) Kinoshita.H et al:Finger forces in fastball baseball pitching.Hum Mov Sci,2017
2) Jon Hore et al:Skilled throwers use physics to time ball release to the nearest millisecond.J Neurophysiol,2011

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

 

新たなパフォーマンス数値「回転数」とは?

新たなパフォーマンス数値「回転数」とは?

 

最近では、投手のパフォーマンスを回転数で表すことが多くなっています。

 

メジャーリーグではトラックシステムという機器を使ってボールの回転数を計測してその数値を公表しています。

 

ストレートでは回転数が多いことにより、リリースした直後の速度(初速)と終速の差が小さくなり、バッターからは球速以上に速く感じ、打ちづらいボールになるようです。

 

球速と回転数は相関関係に近い(球速が高い投手ほど回転数が多い)ようですが、中には球速が低くても回転数が多い投手もいます。

 

その代表的な選手が上原投手です。

 

球速としては140km/hほどですが、回転数は2600回転/分といわれており、メジャー(メジャー平均2200回転/分)でもトップクラスです。

 

ダルビッシュ投手の回転数は2485回転/分でMLB投手199名中の8位であったといわれていて、このデータを参考にしても上原投手の回転数の多さが際立ちます。

 

140km/hのストレートでメジャーの選手から空振りをとれる一つの要因だといえるでしょう。

 

新たなパフォーマンス数値「回転数」とは?

 

ここでみなさんが気になるのは回転数が高いボールを投げるためにはどうすればよいのかという点だと思います。

 

残念ながら今までの投球バイオメカニクスの研究では球速に着目したものが多く、回転数に関する報告はまだ少ないといえます。

 

その中でも一つ興味深い見解を挙げるとすれば、「指の動きが回転数に影響を与えている」という点です。

 

次回はその点にについてお話しいたします。

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

日本とアメリカの学童スポーツの違い

日本とアメリカの学童スポーツの違い

 

日本では小学生でスポーツクラブに所属すると、その競技しか行わない傾向があるかと思います。

 

スポーツ競技が盛んなアメリカでは夏場は野球、冬場になると野球は行わずにアイスホッケーをやるといったように、小さいときは色々なスポーツを経験させて学年が上がってから専門的にスポーツを行う場合が多いようです。

 

日本のように一つのスポーツばかりを行っていると、スポーツ特有の動作を繰り返し行うことになり、体一部分への負担が大きくなり、ケガを起こしやすくなります。

 

また、最近の学童野球では大会数が増えていて体を休める暇もなく、冬場も関係なく年中試合をしている印象があります。いくら理想的な投球動作を習得したとしても投げる頻度が多ければ、オーバーユースの故障につながってしまいます。

 

使いすぎによる故障を防ぐためには投球制限などのルール改正やオフシーズンを設けるなど環境整備が必要不可欠だと思います。

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

遠投練習が肘に加えるダメージ

遠投練習が肘に加えるダメージ

 

遠投は「肩つくり」の意味合いで昔からよく行われている練習だと思います。

 

しかし、近年では遠投することでケガをしてしまうという意見もあり、遠投練習の是非については賛否分かれるところかと思います。

 

今回は遠投練習による肘への負担がどのくらい大きいのかお話しします。

 

大学野球選手に

 

①:マウンドからの全力投球

②:55m先へ低い軌道の全力投球

➂:遠投

 

の3通りで全力投球を行ってもらい、肘にかかる負担を比較した研究があります1)。

 

投球バイオメカニクスでは肘に加わる負担は内反トルク(Nm)という数値を使うことが多く、この数値が大きいほど肘への負担が大きいと判断されます。

 

その研究結果によると

 

①:92Nm

②:95Nm

➂:100Nmでした。

 

②は①よりかなり距離が伸びている(18.44m→55m)のにも関わらず、そこまで数値は上がっていません。

 

それに比べて遠投になると肘にかかる負担がとても大きくなることがわかるかと思います。

 

このような結果になった要因としては、遠投では上向きに投げようとするため、下半身や体幹を効率よく使うことができず、上肢に頼った投げ方となり、肘にかかる負担が大きくなると考えられます。

 

遠投練習をやるのであれば、ただ遠くに投げるのではなく、低い軌道で投げられる距離に留め、股関節・骨盤などを使った正しい投球動作で行うことが重要だと思います。

 

参考文献
1)Fleisig GS et al:Biomechanical comparison of baseball pitching and long-toss: implications for training and rehabilitation. J Orthop Sports Phys Ther. 2011

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

オーバースローで体を傾けることによる2つのメリット

オーバースローで体を傾けることによる2つのメリット

 

以前このコラムでオーバースローでは体幹を横に傾けることで腕を高い位置に保って投球しているということをお話ししました。

 

本日は体幹を傾けることでどのようなメリットがあるかについてお話しします。

 

オーバースローで体を傾けることによる2つのメリット

 

まず、パフォーマンスの観点からですが、スピードボールを投げる条件として重心移動をスムーズに行い、下半身の力を上半身に伝達することが挙げられます

 

そのためには左足を上げたときに右に乗っている体重(右投手)をリリースのときにはステップした左足にしっかりと乗せることが必要になります。

 

リリース直前のフェーズで体幹を傾ける(1塁側)ことができると、重心が体の左側に移動するため、ステップした左足への荷重が加わりやすくなり、その結果、下半身の力を効率よく腕の振りに伝えることが可能になります。

 

また、体幹を傾けることによって肩関節だけに頼らず、体全体を使って無理なく腕の位置を高く保つことができます

 

もし、体幹がまっすぐのままオーバースローの位置まで腕を上げようとすれば、肩関節を無理に動かさなければならず、インピンジメント症候群やSLAP損傷などの野球肩障害の発生につながる危険性があります。

 

体幹の傾きが球速増加につながる1)ことや故障リスクの軽減2)につながることは投球バイオメカニクスの研究で実証されています。

 

体幹を傾けて投げる」という観点を持たれている方はあまり多くないと思いますが、着目すべき重要なポイントだといえるでしょう。

 

参考文献
1) Oyama,S et al:Effect of excessive contralateral trunk tilt on pitching biomechanics and performance in high school baseball pitchers.Am J Sports Med.2013
2) Tocci,N.X et al:The Effect of Stride Length and Lateral Pelvic Tilt on Elbow Torque in Youth Baseball Pitchers. J Appl Biomech.2017

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

ジュニア選手のフォームチェック~膝の角度~

ジュニア選手のフォームチェック~膝の角度~

 

前回の続きでステップ足が地面に着いた瞬間のフェーズで行うフォームチェックをご紹介します。

今回は膝関節の角度に着目します。

 

太ももの直線と膝から下の骨(下腿骨)の2直線のなす角度を膝の曲がり角度としてチェックします。

 

ステップ足がついた瞬間から並進運動からキャッチャー方向への回転運動へと切り替わりますが、ステップ足を地面に対して垂直方向へしっかりと押して骨盤・体幹を素早く回転させることで大きなパワーが生まれ、スピードボールも投げやすくなります。

 

大谷翔平投手がリリース後に飛び跳ねるような動きをするのは、ステップ足でそれだけ強く地面を押しているからです。

 

ステップ足が着地した瞬間は地面を押しやすい膝の角度を保つことが重要となりますが、一般的に、40°〜49°が理想的であるいわれています1)。

 

膝の角度が小さすぎると(膝が伸びた状態)地面に対して垂直な方向へ押す力が発揮しにくくなり、回転運動を素早く行うのが難しくなってしまいます。

 

反対に膝の角度が大きくなる(沈みこみすぎ)と地面を押して体を回転させるのにより大きなパワーが必要になってしまいます。筋肉が発達している大人の選手では問題ないかもしれませんが、ジュニア選手ではスムーズな動作を妨げる要因になりうるといえます。

 

ジュニア選手では「膝が伸びすぎず、曲がりすぎず」が重要なポイントです。

 

1) Thompson SF et al:Youth Baseball Pitching Mechanics: A Systematic Review.Sports Health,2017

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

オーバースロー≠腕を真上に上げる

オーバースロー≠腕を真上に上げる

 

ピッチャーの投げ方には様々な投法があり、その中でオーバースローと聞くと、腕をバンザイの様に真上まであげた状態から振り下ろして投げているとイメージされる方が多いのではないでしょうか?

 

意外かもしれませんが、実はオーバースローではそこまで腕は高く上がっていません。

 

今回はその原理についてお話します。

 

オーバースロー≠腕を真上に上げる

 

上の写真をごらんください。縦に近い赤線が体幹の軸です。

 

その軸から肩に向かうもう一つの赤線と結んでできる角度が腕の角度になります。

 

写真を見ていただくと分かるかと思いますが、90°くらいしか上がっていません。

 

それでも腕が高い位置にあるのは体幹が一塁側に大きく傾いているからです。

 

つまり、体幹の傾斜によって結果的に腕の位置が高くなり、オーバースローが作り出されていることになります

 

「腕を上げてもっと上から振り降ろせ」という指導は肩関節を必要以上に上げることになり、肩関節に負担がかかりやすくケガを引き起こしやすくなってしまいます。

 

上の写真のように肩関節が一番しなっているフェーズでの理想的な腕の高さの目安は90°~100°1)といわれていますので、みなさん参考にしてみてください。

 

参考文献
1)Gary J.C: PITCHING MECHANICS, REVISITED,The International Journal of Sports Physical Therapy,2013

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

フニッシュは軸足に注目

フニッシュは軸足に注目

 

投球動作でフィニッシュの写真を見ると、体幹・股関節を使って効率よく投げられているかを簡単にチェックすることができます。

 

今回はそのポイントについてお話していきたいと思います。

 

フニッシュは軸足に注目

 

上の写真がフィニッシュの写真です。

 

チェックするポイントは軸足である右足(右投手)のスパイク裏がどの方向を向いているかです。

 

体幹・股関節など全身を使ってフォロースルーをむかえているハイパフォーマンスの投手はスパイクの裏が上向きになっています。

 

この写真は良い例で足裏が上向きになっているのが分かると思います。

 

足裏が上を向いているとなぜよいのかというと、足裏を上向きにするためには右の股関節を十分に回転させなければなりません。

 

右股関節が回旋することでその動きに付随して骨盤・体幹・肩甲骨もバッター方向まで回転し、全身を使った力強いフォロースルーが可能となります。

 

イメージとしては右股関節がレバーハンドルでそのハンドルをひねることで全身もスムーズに回転していく形です。

 

股関節のハンドルを回せない投手では、全身をうまく使い切ることができず、パワーロスにつながり、投球パフォーマンスはなかなかあがりません。

 

プロ野球選手のフィニッシュの形を見るとほとんどの選手で足裏が天井を向いていますが、アマチュア選手で天井向きの選手はとても少ないです。

 

股関節を回転させるためには股関節内旋方向への可動域が必須であり、柔軟性が低下している選手では理想的なフィニッシュをむかえることはできません。

 

大前提となる柔軟性を改善した上でフォーム修正に取り組むようにしましょう。

 

スタッフ(理学療法士):芹田

 

前で投げられているかはこの角度でチェック!

前で投げられているかはこの角度でチェック!

 

 

前回、一番前でリリースするためには骨盤と体幹の動きが重要ということをお話しましたが、今回はその内容についてもう少しくわしく説明していきます。

 

下の写真はリリースの瞬間ですが、地面に対して垂直の軸(黒線)から体幹(赤線)がかなり前に傾いています。アメリカの投手ではこの傾きが32°から55°といわれ、この角度が大きい投手ほど球速が高い1)というデータも出ています。

 

 

前で投げられているかはこの角度でチェック!

 

パフォーマンス向上のためにはこの体幹の傾斜をいかにして作り出すかということが重要です。

 

ここで誤った解釈をしないように注意が必要なのは体が前に傾いているからといっておじぎをするような動きはしていないという点です。

 

写真の青線をご覧ください。

 

この線は骨盤の傾斜を示していますが、前に傾いているのがお分かりかと思います。

 

その一方で、体幹の軸である黒線は青線に対して垂直に近い角度になっています。

 

つまり、骨盤に対して体幹はそこまで動いていないことになり、骨盤が傾斜することでその上に乗っている体幹が前に傾いているということになります。

 

先ほどの32°から55°の傾斜を生み出すためには骨盤の動きが重要であるといえます。

 

また、このフェーズの骨盤の動きは前に傾くだけでなく、左のおしりが引ける方向(右股関節内旋方向)に回転することで体幹の入れかえ(右投手では右肩が左肩よりも前に入れかわる)を可能にしています。

 

体幹が入れかわることでより腕を前に伸ばすことができます。右手を伸ばして前のものを取ろうとするときに、体を正対したままの状態よりも右肩を前、左肩を後ろに入れかえた方がより遠くまで手が届きますよね?

 

投球動作でこの動きが出てくると、よりバッターに近い位置でリリースすることが可能になり、パフォーマンス向上につながります。

 

今回の内容についてまとめると「一番前で投げる」とは、骨盤の動きが最も重要であり、それに連動して体幹が動き、最終的に腕が伸びることで完成される動作です。

 

腕や体幹だけでリリースをしようとすると、肘下がりや突っ込んだ形になってしまうので注意しましょう。

 

参考文献
1)Seroyer S.T et al: The Kinetic Chain in Overhand Pitching:Its Potential Role for Performance Enhancement and Injury Prevention,Sports Health,2010

 

スタッフ(理学療法士):芹田