第29回~骨粗鬆症と栄養③

第29回~骨粗鬆症と栄養③

 

今回は「骨粗鬆症と栄養③」としてビタミンKを紹介します。

 

ビタミンKの役割として主に骨を作る働きを促します。

 

ビタミンKの1日の目標摂取量は250〜300μgです。

 

ビタミンKは納豆、海藻、緑の葉の野菜などに多く含まれており、目安としてキャベツ2枚で78μg、茹でた小松菜1株(50g)で105μg、納豆は1パック(40g)240μg含まれています。

 

特に納豆はビタミンKおよび蛋白質摂取にとても有効であり、納豆の消費量と骨折の発生率は反比例の関係にあるとの報告もあります。

 

注意する点として血栓症(血管内に血の塊ができ血流が閉塞される)や塞栓症(血液によって流れてきた異物(血栓)が血管を塞いでしまう)の予防や治療に用いられる薬であるワルファリンカリウム(ワーファリン○R)を飲んでいる方はビタミンKがその効果を減弱させる可能性があります。

 

そのためこれらを服用されている場合は必ず医師に相談してください。

 

ビタミンKの摂取は骨の健康に密接に関わっているため効果的に摂取しましょう。

 

次回は「骨粗鬆症と栄養④」として筋肉を作るのに重要なたんぱく質について紹介します。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第28回~骨粗鬆症と栄養②

第28回~骨粗鬆症と栄養②

 

今回は「骨粗鬆症と栄養②」としてビタミンDを紹介します。

 

ビタミンDには腸でのカルシウムの吸収を助ける役割があります。

 

ビタミンDは主に魚(サケ、うなぎ、さんまなど特に青魚や脂質の多い魚)やきくらげ、きのこ類に含まれています。

 

1日の目標摂取量は400〜800IU(10〜20μg)とされており、目安として卵黄1個(18g)が42IU、干し椎茸2枚(20g)が171IU、鮭1切れ(100g)が1320IU、です。

 

これではなかなか目標摂取量を食事でとるのは難しいと思うかもしれませんが、実はビタミンDは食事からの摂取だけでなく、紫外線にあたることで皮膚でも作られます。

 

骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版(日本骨粗鬆症学会)には日光浴の目安として1日15分程度の適度な日光浴が必要とされています。

 

ビタミンDは特に高齢者に不足していることが多いとされており、原因として脂質の吸収低下、皮膚でのプロビタミンD生成の減少、日光浴の機会の減少などが考えられます。

 

ビタミンDはカルシウムと組み合わせることにより骨密度上昇効果や骨折予防効果があることも報告されており、積極的に摂取しましょう。

 

次回は「骨粗鬆症と栄養③」です。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第27回~骨粗鬆症と食事①

第27回~骨粗鬆症と食事①

 

今回は「骨粗鬆症と食事①」です。

 

特に重要となるのはカルシウム、ビタミンD、ビタミンK、たんぱく質などです。

 

カルシウムは骨粗鬆症予防のためには毎日食品から700〜800mgを摂取することが望ましいとされています。

 

しかし平成27年国民健康・栄養調査(厚生労働省)では20歳以上で1日あたり平均509mgと不十分です。

 

カルシウムは骨の重要な構成成分で、骨粗鬆症の予防・治療には大切な栄養素です。

 

カルシウムを多く含む食品として牛乳、乳製品、小魚、緑黄色野菜、大豆、大豆製品などがあげられます。

 

カルシウム200mgの目安として牛乳180mg、ヨーグルト160g、豆腐1/2丁です(図参照)。

 

カルシウムを摂取するにあたっての注意点もあります。

 

カルシウムだけをとれば骨が強くなるというイメージが強いと感じますがそうではなく、やはりバランスよくいろいろな種類の食材を摂る必要があります。

 

またリンはカルシウムが吸収されるのを妨げるため一部の清涼飲料水やインスタント食品などに含まれる防虫剤や酸化防止剤には注意しましょう。

 

さらに塩辛いもの(漬物や干物など)、カフェインを多く含むもの(コーヒーや紅茶など)、アルコールの過剰摂取もカルシウムの吸収を阻害したり、カルシウムの排泄を促進するため注意が必要です。

 

次回は「骨粗鬆症と食事②」です。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第26回~骨強度を高める運動②

第26回~骨強度を高める運動②

 

今回は「骨強度を高める運動②」です。

 

かかとを上げ下げする運動で、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋(かたいさんとうきん)を強化する運動です。

 

この運動はかかとを上げて下ろすため骨に衝撃が加わる運動となり、この衝撃によって大腿骨頚部(太ももの骨の付け根の部分、転倒によって骨折しやすく血流が悪いため骨折した場合、手術となることが多い部分)の骨強度を高める効果が期待できるとされています。

 

方法はつま先を前に向けた状態で肩幅程度に足を開き、膝を伸ばしたままかかとをしっかりと上げつま先立ちをします。

 

そしてかかとをゆっくりと下ろします。

 

バランスがとりづらい場合は安定した台や壁を片手で軽く支持して行なってください。

 

また立って行うことが難しい場合はいすに座った状態で同様にかかとの上げ下げ運動を行なってください。

 

この運動を行うことで下腿三頭筋以外に足の指を曲げる筋肉も使うことから、足の指および足先で踏みこむ力が鍛えられるため歩行の安定や転倒予防も期待できるとされています。

 

1日50回行うことが推奨されていますが、一度に行うことが難しい場合は数回に分割して行なってください。

 

次回は「骨粗鬆症と食事」です。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第25回~骨強度を高める運動①

第25回~骨強度を高める運動①

 

今回は「骨強度を高める運動①」です。

 

骨粗鬆症患者では背筋力が弱くなっていることが多く、背筋力が弱い人は背骨が変形し背中が丸まってしまう円背姿勢をとりやすいと言われています。

 

背筋運動を行うことで加齢に伴う腰椎(背骨の腰の部分)の骨密度の低下を抑制し、背骨の骨折の発生を減らすことが報告されており、背筋力を強化することは重要です。

 

強化する方法の一例としてうつ伏せをとり、お腹の下にクッションを入れます。

 

両手を体側につけ、上体を持ち上げて5秒間保持します。

 

この時、無理に体を反らしすぎると腰痛を誘発してしまうため下半身から上半身が一直線になる程度の高さまで上体を反らします。

 

また勢いをつけて体を反らさないように注意してください。

 

この運動を1日10回、週5日、4ヵ月間実施することで背筋力および生活の質を向上させたという報告があります(Hongo Mら、2007)。

 

今回ご紹介した方法は重りなどをしようせず自重での負荷のみのため簡便に実施できます。

 

ただし、腰痛がある場合や背骨の骨折を受傷してすぐは行わないようにしてください。

 

次回は「骨強度を高める運動②」です。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第24回~骨粗鬆症と転倒の関係③

第24回~骨粗鬆症と転倒の関係③

 

今回は「骨粗鬆症と転倒の関係③」です。

 

前回骨粗鬆症では脆弱性骨折(骨粗鬆症が原因で発症する骨折)を防ぐこと、骨折の連鎖(脆弱性骨折後に再度骨折してしまうこと)を防ぐことが重要となることをお話ししました。

 

日本での地域在宅高齢者の年間転倒発生率は10〜25%程度で、一般住民の方では一般道路や歩道が転倒の発生場所の半数を占め、日中の外出機会が多い時間帯に転倒の頻度が高いという報告があります。

 

骨粗鬆症の予防と治療のガイドラインの中で中高年者の予防に関して「自己管理による歩行運動も有効である」、「一般中高年者には、歩行を中心とした運動の日常的実施を推奨する」(グレードB)と記載されており、骨粗鬆症の予防のためには歩行が重要であることが記載されています。

 

具体的な歩行の注意点として普段よりやや歩幅を広くして、やや速足で歩くことが薦められています。

 

通常速度での歩行では運動効果が少なく、1日30〜60分、1回で歩いても良いし、2〜3回に分けても良いと言われています。

 

また週2〜7回行うことが薦められています。

 

次回も予防方法をご紹介します。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第23回~歩行と骨粗鬆症の関係②

第23回~歩行と骨粗鬆症の関係②

 

今回は「歩行と骨粗鬆症の関係②」です。

 

骨粗鬆症が原因で発症する骨折を脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折といい、軽微な外力(一般的に立った高さからの転倒)で発生した骨折のことを指します。

 

骨粗鬆症では骨強度の低下に伴って骨折発生のリスクが増大すると言われています。

 

発生数が多い骨折の種類として椎体骨折(背骨の骨折)、大腿骨近位部骨折(大腿骨の付け根の骨折)、橈骨遠位端骨折(手首の骨折)、上腕骨近位部骨折(上腕骨の付け根の骨折)があり、これらは高齢者の四大骨折とも呼ばれます。

 

脆弱性骨折を受傷してしまうと再度骨折してしまうリスクが高くなってしまいます。

 

これを「骨折の連鎖」と言います。

 

さらに驚くべきことに例えば椎体骨折を一度受傷すると前腕、椎体、大腿骨近位部を骨折するリスクがそれぞれ1.4倍、4.4倍、2.3倍に高くなるとの報告もあります(Klotzbuecher CMら、2000)。

 

そのため骨粗鬆症では脆弱性骨折を防ぐこと、骨折の連鎖を防ぐことが非常に重要となります。

 

次回具体的な予防方法についてお話しします。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第22回~歩行と骨粗鬆症の関係①

第22回~歩行と骨粗鬆症の関係①

 

今回は「歩行と骨粗鬆症の関係①」です。

 

皆さん骨粗鬆症という言葉を一度は聞かれたことがあるかと思います。

 

骨粗鬆症というのは骨がもろくなり、骨折しやすい状態にある全身的な骨の問題です。

 

原因は2つあり、1つ目に20歳代までに獲得する最大骨量(これが生涯で最大となる骨量)が少ないことです。

 

2つ目に骨は生涯にわたって絶えず古い骨を吸収して新しい骨を作る新陳代謝を繰り返しており、このバランスが崩れ、骨を壊す方が勝ることによって骨量が減少することがあげられます。

 

このバランスが崩れる原因は主に閉経、加齢、運動不足があります。

 

骨粗鬆症の日本の患者数は1,280万人(男性約300万人、女性約980万人)と推計されています。

 

言い換えると約10人に1人の割合で骨粗鬆症の方がおられるということです。

 

「骨粗鬆症は骨の老化の問題だから仕方がない」と思われていないでしょうか?

 

多くは骨粗鬆症治療も転倒などで骨折を起こしてからやっと始めるという方が多いのが現状です。

 

ぜひ予防の観点から考えてみてください。

 

次回は「歩行と骨粗鬆症②」です。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第21回~フレイルと栄養について

 

今回はフレイルと栄養についてです。

 

フレイルは身体的、社会的、精神・心理的側面をもち、これらはいずれも食事摂取と相互に関与しています。

 

例えば身体機能の低下から買い物へ出るのが難しくなったり、台所で料理をするのが難しくなったり、食べることが難しくなるなどの問題が起きてくることで低栄養となりこれがフレイルにつながる原因となります。

 

フレイル予防のための栄養という面では特にタンパク質に関する報告が多くみられます。

 

摂取タンパク質量が低いことがフレイルと関連性が高いことや、タンパク質摂取量が低くなることは筋力低下と関連することなどが報告されており、66歳以上の高齢者では高タンパク質食で死亡リスクが低下していたことも報告されています。

 

手軽にタンパク質をとる手段の一例として缶詰やレトルト食品、惣菜などの加工品や保存食がおすすめです。

 

一般的には塩分が高く避けられることが多いのですが、手軽にタンパク質を取り入れることができるという利点もあります。

 

コンビニなどで売っているサラダチキンは高タンパク質で糖質、脂質も比較的低いためおすすめです。

 

次回は「歩行と骨粗鬆症の関係①」についてお話しします。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平

 

第20回~フレイルと筋肉について

第20回~フレイルと筋肉について

 

これまでフレイルと歩行についてお話ししてきました。

 

歩行以外にもフレイル判定の運動機能として筋力を指標とすることもあります。

 

今回は筋力測定の中でも簡便でスポーツテストなどで多くの方は経験したことのある握力についてお話しします。

 

まず測定方法の一例として①両足を肩幅に開いて立ち、②グリップの握る位置を握りやすいように調整する、③測定時は立位とし、全力で握る、④利き手で2回測定します。

 

その際の注意点として腕は上体から離れすぎず、また腕が上体についたり振り回したり、膝を曲げたりしない、②2回の測定値の高い方を記録とします。

 

握力とフレイルの関係として「フレイル判定・診断の提案」(J-CHS)では男性が26kg未満、女性が18kg未満を基準としています。

 

握力は脚や体幹などのより大きな部位の筋力と関係が深く、個人間の全身の筋力の優劣を相対的に反映しているとも言われています。

 

スポーツ施設などで定期的に測定してみてはいかがでしょうか。

 

次回はフレイルと栄養についてお話しします。

 

島根大学医学部附属病院:川本晃平